翌日はすぐにやってきた。朝気がつくと机につっぷして寝ていたようだった。

次第に頭は通常可動をはじめ、思い出した。

「ボクシングの試合……」

よく考えれば昨日はボクシング教本を本屋で立ち読みしただけだった。

「まあいっか、なんか愛子さん、ひょろっちくて弱そうだし」

 

それにしても何故、愛子さんは私につっかかってくるのだろう、何もわからない状態で

学校へ着く。

教室へ向かうとガヤガヤ皆が騒いでる。

「えっ……」

友菜は自分の目を疑った。

それは黒板に大きく描かれた、愛子と友菜がボクシングで勝負をつけるという

内容だった。後で知ったがそれは愛子が煽るような気持ちで描いたものだった。

しかしすぐに一時間目に来た数学の教師にそれらはすぐ消された。

(人が集まっちゃうじゃない! 宣伝なんかしなくても! 誰よ!)

あがり性の友菜は自分の机でつっぷした。

 

そして三時間目の体育の授業になった。

皆自分の好きなスポーツをして良い、だが今回は違った。生徒たちがこぞって

女子ボクシング部に入っていくのだった。

ロッカールームで体操服に着替えてリングのある部屋まで行く。

ガヤがうるさい。

「ちゃんと来てくれましたね」愛子は嬉しそうに笑う。

だがいつも愛子の笑みには裏がありそうな感じを、友菜はやはりしてしまう。

「マウスピースは用意出来ました?」

「あ、はい」

「正々堂々とやりましょうね、」と愛子がグローブを渡してくる。

それは青だ。

「あの、愛子さん?」

愛子は赤いグローブを取り付けている。

「赤って青より格上ですよね?」

「そうです、赤のほうが偉いんです」

「フェアに行くんじゃないんですか?」

そう言うと愛子は一瞬キッと友菜をにらんだがすぐに元の笑顔になる。

「経験ですよ、私ボクシングジムに通ってて。学業意外にも親が

行かせるんです、ですから強さでいえば私のほうが上」

「へぇー、愛子さんは勉強だけだと思ったんですが色々されるんですね」

その【勉強だけだと思った】の部分で再び愛子はキッとした目になる。

「貴方に私の苦労が……まあ、その辺は別にいいです」

愛子が偽の笑顔で笑ってみせた。

数分後、レフリー経験者が学級内にはいないので、まいったと言うか、それとも立ち上がれなく

なるまで試合は続行されると愛子はその場でルールを宣言した。

周りから拍手が起こる。毎日が退屈でそんな中受験を考えなければいけないので

こういった形でストレスを解消するんだなと友菜は思った。

リングの上へ友菜と愛子が向かい合って立つ。

「あれ?水……着?」

愛子は薄い水着を着ている。乳首は透けて見えるどころか、性器のまわりに生えた毛もしっかりと見える。

「ふふ、こちらのほうが動きやすいんですよ」

愛子は笑いながら言う。

「ま、まあ要は腕でしょ?」

「貴方にその腕はあるのでしょうか? ではゴングをお願いします」

カーンとゴングが鳴る。

友菜は急いでマウスピースを口に運ぶ。

昨日から洗っていなく、唾液の匂いをツンとさせるそれは、綺麗に口に収まった。

「さあ、来なさい」

しょっぱなから愛子は挑発してきた。

ギャラリーが沸く。

「バカにしてんじゃないわよ!」

友菜はドタドタと突っ込んでいってストレートを放つ。

「やれやれ、基礎がなったいないですね」

バァン!とそのストレートは見事にガードされた。

「大降りすぎるんですよ、それに順序というものもあります」

愛子はズッと銃身を下に降ろすと、素早くジャブを打って来た。

ガードなぞやるのも初めてな友菜の顔面にパンパンと当たる。

(痛いっ! 痛いっ!)

それによって友菜のガードが甘くなる。

「……これはちょっと苦しいですよ、ごめんなさい……」

愛子がそう呟くとボディアッパーを打った。

 

どぶっ……

手首まで柔らかい友菜のボディにグローブがめり込む。

 

「……」

友菜は苦悶の声さえあげれない。

そして力が抜けてきた所で

純白でヌラヌラに唾液をたっぷりまとったマウスピースを口から突き出した。

「んぶふぇっ!」

苦しそうにマウスピースを吐き出した。

ビチョッ、びたん、びたん、びたん。

唾液まみれのマウスピースが、唾をまわりに撒き散らしながら跳ねる。

びたん、びたん、びたん。

柔らかいそれは止まる事なくはねる。

そしてうつぶせに友菜はダウンする。

「もう終わりですか?それにしても、汚いですねぇ」

愛子は呟いた。

「私、他人のマウスピースが大嫌いなんです。だって敵の臭いものでしょう?」

そう言って愛子は散々跳ね回った友菜のマウスピースをグローブで拾い上げた。

ドロッと唾液が滴り落ちる。

「でもね、嫌は嫌でも、相手を征服した気になるの。だってマウスピースって

形状的に簡単に口から吐き出される事は無いでしょう?

だからそれを吐き出した程私が強いっていう証なんです」

そう言って愛子は友菜の吐き出したマウスピースを拾い上げる。

「これだけぬちょぬちょしたら滑らずに掴むのが困難ね」

友菜はボディのダメージで倒れているままだ。

「匂いは、どうかしら」

愛子は鼻にそれをあてがう。

「……とっても臭いんですね、可愛くてモテる女の子が吐き出した

臭くて汚くてぬちょぬちょのマウスピース」

「……」

友菜は立ち上がろうとしていた。

「まだやる気なんですね、レフリーいなくてカウント制無いんでゆっくり立ち上がってください。

そう言いながら、愛子は立ち上がった友菜の口にマウスピースをくわえさせた。

「どうせまた吐くんでしょうけどね。どうですか? 皆の前でその強烈な匂いのする

グロテスクな歯形のついたゴムの塊を吐き出すのは。ある意味性器を露出しているような

ものですよ、同じように汚くて臭い。私のグローブもあなたのツバでヌルヌルして嫌悪感がします。

でもクサいものほど愛おしい」

「くっ……」

友菜は苦しいボディに悩ませながらその愛子の言葉を反芻した。

(私だって、自分のマウスピースでオナニーしたから、同嗜好者!?)

 

「さあ、どうします?顔面がいいですか? それともまたボディが良いですか?」

愛子が余裕の表情でそう言う。

「くっ!」

友菜は唾液を口から滴り落としながらパンチを打つ。

「素人ですね」

愛子はのけぞって回避した。

友菜はハッとボディをガードした、又打たれてはかなわない。

「そうやって露骨なガードをしていてはだめですよ」

愛子のフックが一発、二発が友菜に突き刺さる。

「うべっ! ぶはぁっ!」

唾液が散る。

友菜の口からもっこりとマウスピースが盛り上がる。

部室の外から差し込む光でヌラヌラに光って見える。

「もうマウスピース吐いちゃうんですか? もっとツバをべちょべちょに

しながら吐き出してくださいよ」

愛子は動きの止まっている友菜の口にグローブを押し当ててマウスピースを

きちんと噛ませた。

「マウスピースは全てが果てたときに壮大に吐いてください。楽しみです。

大嫌いな相手のマウスピースを嗅ぎながら優越感に浸る。最高じゃないですか」

愛子は少し興奮しているようだった。

ボタッ、ボタタッ。

友菜の唾液がマットの上にびちゃびちゃと落ちる。

どぅぼっ!

友菜に二発目のボディが打ち込まれる。

「うぐっ!……ぶへぇぇぇぇっ!」

醜い声をあげて友菜がマウスピースを勢い良く吐き出す。

そして先ほどと同じようにうつぶせにダウンをする。

びちゃ……

愛子の胸に友菜のマウスピースが張り付いた。

そこからツツーッと降りていくそれを愛子はグローブで掴んだ。

「理想どおりです。この唾液の量、そして匂いもさっきよりきつい」

皆さん、これが彼女の吐いたマウスピースです!」

愛子は高々と友菜のマウスピースを挙げた。

「うぐぇぇぇ……」

友菜は苦悶の表情の中、立ち上がろうと必死だった。

だが体が思うように動かない。

「もう動けないんですか? じゃあ思う存分遊ばせてもらいますね。

 

そう言うと愛子は友菜をあおむけに起こして、友菜のブルマをパンツごと脱がした。

パンツには黄色い筋が滲んでおり、その上にヌラヌラとした液体が付着していた。

「オリモノ? いや、これは濡れてますね。ボディを喰らって苦しい中、興奮

されてたんですか? 本当にあなたはどこもかしこも汚い、臭い」

そう言って愛子はマウスピースを濡れた優子の膣口に当てた。

「バイブより曲がってるから、色々刺激があってよいんじゃないですか?」

にゅるっと友菜のマウスピースは己の膣口に入っていく。

抑えると完全に膣の中に納まった。

クラス中の皆が友菜の性器に目を向ける。

膣口からゆっくりとぐにゃぐにゃでぐちゃぐちゃのマウスピースが顔を出す。

「ううっ!」

ぶりゅっ!

すべり出るようにマウスピースは膣口から排出され、愛子の足元までぐちゃぐちゃ

ごろごろと転がってきた、それを愛子は拾って嗅ぐ。

「友菜さん、凄い。ねっとりと愛液とツバが交じり合って生臭い磯の香りがする。」

そう言う愛子の水着の股間は濡れ、愛液が漏れて垂れている。

 

「友菜さん、あなたは、私の好きだった男子ボクシング部の人の告白を断った。私が

好きだった彼には幸せになってもらいたくて、振った貴方が嫌いです、でも次第に

あなたが私の頭の中でグルグルまわってきてしまって、好きなのか嫌いなのかは

自分でも良くわからない、ただあなたを弄っていると答えが出そうで……」

「何よ……それ」

友菜は立とうとするが足がガクガクして思うように動かない。

「べぇっ」

愛子は自分のマウスピースをグローブに吐き出した。

そして友菜の鼻先へ持っていく。

「私のマウスピースも臭いでしょ、あなたのほどじゃないけどグチャッとしてて。

ほら、ツバが垂れるわ」

友菜の鼻にツーンとする香りが広がった。

「これと、今あなたが排泄したマウスピース、両方入れましょ」

愛子はまず排泄した裕子自信のマウスピースを膣口から一気に入れた。

「ううっ!」

そして愛子自身のマウスピースもさらに押し込んだ。

「ううっ! ああっ!」

完全に膣の中へ押し込んだ。

そして愛子は友菜の勃起して立ち上がっているクリトリスを指で刺激した。

「あっ、あっ、ああっ!」

ぶりゅっ! ぶりゅっ!

二個のマウスピースが連続で友菜の膣口から排泄される。

べちゃびちゃっ、びちゃぁっ!

「派手です、私興奮が止まりません」

愛子は自分のマウスピースをすぐに口にはめた。

「しょっぱくて生臭いです、ああ、何で私はこんなに汚い物がすきなんでしょうか……。

ダメですね、もう私はダメです。私の中には二人の人間がいるみたいです」

そう呟く愛子だが、同級生たちは拍手喝采だ、特に男子生徒。

女性器を始めてみた面々も多かったのだろう、盛り上がっていた。

「あ……皆さん喜んでるならちゃんとボクシングしないと」

愛子は友菜にマウントポジションをとり、顔を殴る。

グシャッ! グシャッ! グシャッ!グシャッ!

四発目で口の中が切れたのか、唾液に血が混じっている。

「すみません、すみません!」

次々と顔面を殴られる。

グシャッ! グシャッ! グシャッ!

「ぶへっ、ぶへっぶはぁっ!」

しばらく殴り続けると友菜の顔が腫れあがり、痣も出来てきた。

「もう、これまでですかね……やりすぎましたか」

愛子はそう言いながら立ち上がった。

「友菜さん、ありがとうございます。こんな性癖の私と試合をしてくれて」

だが友菜はこれで終わりにするわけにはいかなかった。

「このままやられっぱなしでいる訳には……いかない」

ゆっくりと立ち上がり構える。

「あ、そうでなくちゃ、私、友菜さんはもっとやれる方だと思いました」

「……サイコ女!」

「何とでも言ってください。私はもう満足です」

「このままじゃ、引っ込めない!」

友菜は愛子にストレートを放った。

「やはり素人は素人ですね」

何なくそれはかわされ、すぐに愛子はアッパーを放った。

グワッシャ!!!!

友菜に見事にヒットし、友菜はえびぞりに宙に浮いた。

血と唾液が天井に噴出されビチャビチャと付着する。

 

 

ダンッ!

友菜の体がマットの上で跳ねた。

「あ……がっ……」

友菜の口から言葉にならないものが出てくる。

「これで終わりですね、観覧者の皆さんにも私がどういう

人間かわかったと思います。良い所のお嬢様と言われますが

ただの変態なんです女子ボクサーを弄るのが好きなんです」

愛子は自分の性癖を皆にぶちまけたのだ。

変態的な試合を通して。

「もう、疲れました。私は私でいたいんです。結果的に

友菜さんが好きで、うん、すきなんです。……それも性的な意味で」

ガヤガヤと他の生徒たちがざわめく。

 

友菜はもう立ち上がらなくて良いなと思った。

ただの茶番じゃないか、愛子は自分の事をカミングアウト

する為だけに私を利用して、そうして開き直ったのだ。

もうこれでいいじゃないか、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待った。

 

悔しくないのか?

いや、悔しい。

愛子が精神的に歪んでいるのがわかったが、それだけでいいのか?

「良く……ない」

友菜は重い体を起こす。

クーラーが聞いていないので汗だくだ。

くそっ! たて! たてっ!

ガクガクと痙攣を続ける足で必死に立とうとしている。

立つんだ! くやしいだけじゃダメだ!

そうでなきゃ、納得が出来ないじゃない。

私を利用とした罰として一矢報いなければ!

必死に念じているといつのまにか立っていた。

ああ、理由なんてどうでも良いなと思った。

愛子は壁だ、自分の人生の道に立ちふさがった壁のようなものだ。

そんな漠然としたもの。

 

ボクシングの経験が無い、それが何だ、突っ走ってやる!

 

 

もう自分がブルマとパンツを脱いでいようと気にはならなかった。

男子生徒達が息を飲んで見ている。

丸出しになった陰毛が汗にまみれて熱気を放っている。

 

「立てましたか、でももう余力が無いでしょうね」

愛子がスッキリしたような顔をしている。

「利用されるのが大っきらいなんだよぉぉ!」

友菜は叫んだ。

「無理ですよ、私のジャブでさえ避けれない貴方に勝ち目はありません。

もう終わりにしても良いんです」

「やかましい! 私には私の立場がある、しっかりとした心も持ってる。

何があろうか突き抜ける! 理由なんて無い。ただ18歳の自分に後悔

したく無いだけだっ!」

愛子は驚いたようにぽかんと口をあけて言った。

「でも殴りすぎて顔が腫れてますよ、棄権を薦めます」

「じゃかぁしい!だから私は私のやりたいようにやるって言う事だ!」

そう叫んだものの、ダメージが蓄積していて友菜はフラフラしている。

「……貴方の気持ちはよくわかりました。じゃあ……最後まで行きますか」

愛子がジャブを打つ。

パンッ、パンッ!と音がした、友菜はそれをガードしている。

「へへっ、うまくいった、教則本」

「……」

愛子は少し動揺した様子でジャブを再び放つ。

パンッ!

グローブでガードされる。

 

「私さぁ」

友菜が言う。

 

「物覚え悪いんだけど一度覚えたら忘れないんだよね」

「くっ!」

愛子は怯んだ。たまに天才タイプという者がいる。

この間にテクニックを盗まれてしまった。

焦る。愛子は焦る。

 

バシッ!

友菜のジャブが愛子の顔面に当たる。

 

「いつつ……」

愛子が一歩下がる。

確かに試合中の短期間に友菜は成長したかもしれない。

だが愛子には今まで苦労してきた分、プライドがある。認めたく無い。

それは怒りに変わり、乱暴にフックを打った。

ぐしゃ……

友菜の顔に右フックが決まり、醜く顔を変形させた。

「ぶほ……」

友菜の口から血が吹き飛んだ。

「追撃します!」

よろけた友菜に今度は左フックが打ち込まれた。

 

 

 

コンッ……

 

血まみれの奥歯が友菜の口から吐き出された。

そこで愛子は一旦動きを止める。

「マウスピースしないとひどい事になります。どうせまた

吐き出す事になるとは思いますが、どうぞ口にはめて下さい」

嫌味な言い方だった。

友菜は黙ってマウスピースを拾い、口にはめた。

 

 

 

バシッ! グシャッ!

一方的に友菜は殴られる。

(どうやらジャブ程度しかガード出来ないようですね)

愛子は思った。今までの試合内容からして、明らかにボクシングを知らない。

教則本と言っていたが、やはり本を読んだ程度の知識しかないのだろう。

 

グシャッ、グワシャッ!

 

友菜の左目は腫れて塞がってしまった。

「棄権して下さい、このままだと息絶えるまで殴り続けることになります」

愛子の言葉に友菜は軽い笑みを浮かべる。

「まださぁ……負けって決まってるわけじゃないんだよね」

肩で息をしながら言い、説得力は皆無だ。

(何か技とか隠してる? いや、友菜さんはビギナーに間違いありません、ハッタリですね)

愛子は考える。

 

繰り返すが愛子は自分の性癖と性格をクラスの皆の前で暴露した。

「良い所のお嬢さん」と思われるのが主にになっていたからだ。

「何故出来ない!」

ことあるごとに作法について説教をされ、ひどいときには竹刀で叩かれる。

そんな生き方を続けるのは無理だ。変態と言われてもう誰にも期待されない

人生を送りたい。その気持ちと、自分の女子ボクシングに対する思い。

そして友菜に対する想い。

 

もう全てぶちまけてしまった。

(今何で私は戦っているのだろう? もう目的は果たしたのに、やめてしまえばいいのに)

愛子はそう感じながらも腕を止めない、

確実にグシャグシャと手応えを感じる。

友菜のマウスピースが血まみれになって口からはみ出ている。

だが倒れない。

「私たちさぁ……」

友菜が呟く。

「私たち、何で戦ってるのかなぁ」

 

「私にもわかりません」

 

二人の少女は突っ走る。

 

続く